ニュースの概要
ドバイ発のフレグランスブランドKayaliが、中国のSephora約300店舗で販売を始めた。取り扱いは「Vanilla 28」「Yum Boujee Marshmallow 81」「Musk 12」など人気の7種類で、SephoraのWeChatミニプログラム(=アプリ内で動く小さな通販画面)からも買える。進出までにはおよそ2年をかけたという。創業者のMona Kattan氏は、現地の美容アドバイザーや美容関係者を集めたイベントを開き、商品の説明だけでなく香りを重ねて楽しむ使い方そのものを伝えた。単に商品を並べるのではなく、使い方の文化ごと持ち込もうとする姿勢が目を引く。
引用元: Kayaliが中国市場に本格進出、Sephoraで香りのレイヤリングを訴求(WWD)
分析・見解
2年の準備期間が物語る、中国市場の難しさ
中国の香水市場は、成長余地が大きいと言われてきた。ただし欧米のように、香水を毎日つける習慣が深く根づいているわけではない。さらに香りの好みも、甘さの強さや残り方で大きく分かれる。Kayaliが進出に約2年をかけたのは、この壁を理解していたからだろう。商品を送れば売れる市場ではなく、売り場に立つ人の理解が結果を左右する市場である。
売るのは香水ではなく、重ね方という遊び方
Kayaliの強みは、バニラやマシュマロ、ムスクといった分かりやすい香りの組み合わせにある。1本だけで完結させず、2本を重ねて自分だけの香りを作る提案が中心だ。これは客単価を上げる仕組みでもある。1本買った人に、相性のよい2本目を自然に勧められるからだ。化粧品でいう「重ね塗り」の発想を香りに持ち込んだ形で、購入のきっかけも増える。
美容アドバイザーを味方にする、店頭起点の設計
今回のイベントは、消費者向けの広告ではなく、現地の美容アドバイザーに向けて開かれた。中国のSephoraでは、売り場のスタッフが客の選択に大きく影響する。スタッフ自身が香りの重ね方を体験し、自分の言葉で語れるようになれば、それが最も説得力のある広告になる。インターネット広告の費用を抑えつつ、店頭の成約率を高める手堅い手法といえる。
独占展開が生む強みと、依存というリスク
Sephoraと組んだ独占的な展開は、約300店舗の売り場とアプリ販売を一度に確保できる利点がある。一方で、販売網をひとつの小売に預けるため、条件交渉で弱い立場になるおそれもある。成功すれば他の流通へ広げる足がかりになるが、売れ行きが伸びなければ棚を失う危険もある。この両面を踏まえ、段階的に販路を増やす判断が今後の焦点になるだろう。
ビジネスへの影響
小さな香水ブランドが真似できる三つの視点
大手のような広告予算がなくても、学べる点は多い。第一に、商品の説明より使い方の提案を先に作ることだ。香りの重ね方を三つほど型にして、売り場の人に渡すだけで会話が生まれる。第二に、販売員向けの体験会を最優先で行うことだ。第三に、オンライン販売の入口を店頭とそろえ、迷わず買える導線を整えることである。
海外展開で見落としやすい準備の順番
進出を考える企業は、物流や契約より先に、現地の香りの好みと使い方の習慣を調べるべきだ。小さな試験販売や限定イベントで反応を確かめ、売れ筋の香りを絞ってから本格展開に進むと、在庫の無駄を減らせる。また、一つの小売に頼りすぎない計画も早めに描いておきたい。
日本でも、香りを重ねる楽しみ方を教える教室や体験型の売り場は、ブランドの記憶を残す有力な手段になる。