スメルマクシング現況報告

香りワードローブ文化の最前線

Smellmaxxing Journal

Haezeが仕掛ける香りの重ね付け市場:Target限定で10〜49ドルの新しい香水の買い方

Haezeが仕掛ける香りの重ね付け市場:Target限定で10〜49ドルの新しい香水の買い方

ニュースの概要

新ブランドHaezeが11月1日、米国の量販チェーンTarget限定でフレグランスの販売を始めた。創業者が掲げるのは、一つの「自分の香り」に決めてしまう従来のやり方ではなく、複数の香りを組み合わせて気分や場面に合わせる「香りのワードローブ」という考え方である。ラインアップは香水、ボディー・リネンミスト、ソリッドフレグランス(練り香水のような固形タイプ)、キャンドルの4形態で、価格は10〜49ドルに収まる。商品の構成そのものを重ね付け前提にそろえており、肌だけでなく衣類や寝具、部屋へと香りを広げる使い方まで視野に入れた提案になっている。情報源は美容業界ニュースのPlaybook of Beautyである。

引用元: Haeze、レイヤリング前提のフレグランスブランドをTarget限定で発売(Playbook of Beauty)

分析・見解

「一本を選ぶ」から「組み合わせを選ぶ」へ

従来の香水売り場は、客に「自分の一本」を選ばせる場所だった。香水は安くない。外せば後悔も大きい。だから売り手は試香を重ねさせ、その人を象徴する香り(=シグネチャー)を決めてもらおうとしてきた。

Haezeはこの前提を外している。10〜49ドルなら失敗の痛手は小さく、複数を買って家で混ぜること自体が楽しみになる。ファッションで重ね着を自然に楽しむ世代にとって、香りだけが「一点で決める」ものである理由は薄い。香りを「一生ものの持ち物」ではなく「服の着回し」に近づけたことが、この提案の核心である。

4つの形態が、そのまま重ね付けの部品になる

重ね付けは、これまで愛好家の技だった。濃さや持続時間の違う香りを肌に載せるには経験が要る。Haezeは形態ごとに役割を分けやすい構成をとっている。

たとえば固形のソリッドは首や手首に小さく置ける。ミストは広くやわらかく香る。リネンミスト(=寝具や衣類にかける香りのスプレー)は肌の外へ香りを広げる。香水は中心に据えられる。キャンドルは空間を受け持つ。形態で強さと広がりが自然に違うため、初心者でも濃くなりすぎにくいと考えられる。レイヤリング(=香りの重ね付け)を「技」から「商品設計」へ移した点が新しい。

高級ブランドの先行例と何が違うのか

重ね付けの提案そのものは新しくない。Jo Malone Londonは以前から「フレグランス コンバイニング」を打ち出してきた。Bath & Body Worksは、同じ香りのミストとローションを揃えて使わせる売り方で知られる。Sol de Janeiroのように、ボディーケアと香りをつなげて支持を得た例もある。

違いは三つある。価格が低いこと、全国の量販店で買えること、そして最初から別々の香りを混ぜる前提であることだ。同じ香りで揃える売り方と比べ、自分の気分で組み立てる余地が大きい。Target限定という形も、新ブランドが自前の店舗なしに全国の棚を得る手段として筋が通っている。

売り場で「相性」をどう伝えるかが勝負になる

弱点もある。Targetには百貨店のような対面接客が少ない。重ね付けは相性で結果が変わるのに、試す前に買う客が多くなる。組み合わせの失敗が続けば、「面倒なブランド」という印象が残りかねない。

ただ、価格が低く買い足しやすいので、客は試行錯誤を続けやすい。香りは写真に写らないため、SNSでは「何と何を混ぜたか」という言葉が拡散の材料になる。組み合わせの名前が共有されるほど、客がブランドの宣伝役を担う。今後は他の新興ブランドも同じ価格帯で追随し、売り場の言葉が「一本勝負」から「複数で遊ぶ」へ変わっていく可能性が高い。

ビジネスへの影響

「失敗しにくい価格帯」が試行回数を増やす

香りの購入では、最初の一本の金額が心理的な壁になる。Haezeの10ドル台の商品なら、客は気軽に二つ目、三つ目を手に取れる。ここで見るべきは単価ではなく、一人あたりの購入点数である。単価が低くても、点数が増えれば売上は確保できる。

また、価格帯をそろえるとギフト需要(=贈り物としての購入)も取り込みやすい。「三つ選んで30ドル程度」という説明は客に伝わりやすい。自社でも、主力商品の隣に少額で試せる商品を置けないかを検討したい。

売り場とパッケージで組み合わせ方を伝える

重ね付けは、説明がなければ初心者には難しい。棚の札やパッケージ裏に「朝は軽く、夜は重く」といった組み合わせ例を載せるだけで、迷いはかなり減る。店頭に人手が少ない場合は、QRコードから短い動画を見せる方法も使える。

組み合わせ表を作るなら、まず失敗しにくい定番を三つ用意するのがよい。香りは写真に写らない。言葉と写真の工夫が成果を左右する。

小さな実験から始め、数字で見直す

新商品を開発する前に、既存の商品で試せる。たとえば二つの商品を組み合わせたセット提案を一か月だけ行い、セット購入率、リピート率、客からの問い合わせ内容を記録する。結果が良ければ、重ね付け前提の新商品に進めばよい。

一方で、量販店への依存には注意が必要だ。Target限定は露出に強いが、販売条件や棚の配置は相手次第である。自社の通販やSNSで顧客との接点を持ち続けることが、長期の安全策になる。

関連記事

← ブログ一覧へ戻る